鹿児島県南九州市川辺町、峠坂洋昭司法書士事務所の峠坂です。6月も終わり。月日が経つのは早いものです。いかがお過ごしでしょうか。
さて、成年後見のお問い合わせが多いので、相続と成年後見制度についてお話させていただきます。
成年後見制度は主として認知症のお年寄りの方など、契約の良し悪しを判断できない方(難しい法律用語で意思能力の欠如といいます)について申し立てをいたします。
大変失礼な言い方になりますが、認知症の方は自らの判断で印鑑を押すことができかねるので、裁判所のほうで認知症患者の後見人となる方を選んでもらって、その後見人が認知症患者に代わって印鑑を押すことができる制度とご理解ください。
こういう言い方をすれば「そんなに便利な制度があるのだ!」と思われるご親族のかたもいらっしゃるかもしれませんが、実際はそうではありません。
まず、通常 被相続人の遺産を分けるには「遺産分割」の方法によります。遺産分割は相続人の自由な話し合いで決めることができるので、「兄はいろいろあったから親の資産を全部あきらめるよ」とか「弟が稼業を継ぐから、本当は俺の取り分は○○○万円あるんだけど、今回はもういいよ」。なんて具合に金銭的評価によらない合意の仕方が認められています。印鑑のいただき方によっては説明不足によりトラブルにもなる可能性もあるのですが、金銭的な面で融通が利く。これが普通の遺産分割です。わかりやすく申し上げると、「相続人のどなたかに全面的に譲る」そういう分割が可能なのです。
しかし、相続人の中に、認知症患者がいらっしゃって、成年後見を申し立てた後、遺産分割をした場合どうなるのでしょうか?
後見人は確かに印鑑を押せるのですが、裁判所のほうから、「法定相続分を留保した分割協議の内容にしてください」だとか「被後見人のために不動産ではなく現金を取得してください」などの指摘が入ります。比ゆ的に言えば、裁判所が被後見人(認知症の患者)の守り手となって金銭、特に現金が被後見人の財産に入ってくるように全力を尽くす制度が成年後見制度である。そういうイメージをもっていただければわかりやすいと思われます。
であるので、周囲のご親族の実情に合わせた形で遺産分割の合意をすることができず、結局「そんなに金がかかるのか?」だとか「そんなことならもーやめた」などと、遺産分割を断念される方もけっこういらっしゃいます。本来なら認知症の患者は相当数存在するにもかかわらず、申し立てがなされないのがこういう事情があるからなのかもしれません。認知症患者は予備軍を含めて300万人。うち成年後見制度を申し立てたのはわずか4万件弱です
銀行の預貯金の解約を契機に、成年後見制度を申し立てるケースも多いのでしょうが、預貯金の解約が無事終了しても、その後も成年後見人はずっと立ったままです。後見業務は認知症の方がお亡くなりなるでずっと続きます。後見業務は終了しないのです。こういうところにも後見人の難しさがあります。
こういう面倒な事態を回避するにはどうすればいいのでしょうか。
それは遺言を書かれることです。遺言についてはまたの機会にお話しさせてください。
司法書士・行政書士 峠坂洋昭
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