相続登記と固定資産税について

鹿児島県南九州市川辺町の司法書士・行政書士事務所 司法書士の峠坂洋昭です。だいぶ寒くなってきました。体調はいかがでしょうか。

さて、先日、相談会に相談員として参加したのですが、予想以上に相続した土地の固定資産税についての多くの問い合わせがございました。以下ご参考に。

自分の父、母がなくなるなどして、相続が発生した場合、固定資産税はどうなるのでしょうか?

結論から申し上げますと、「相続登記(名義変更)をするにしろ、しないにしろ、固定資産税はかかり続ける。相続登記(名義変更)をしなくても、「相続人代表を届け出てください」との通知が地方自治体から相続人のどなたかに届くしかも届出がない場合役場からの問い合わせは半永久的に続く。」というのが答えでございます。

相続登記(名義変更)をするかしないかは、不動産上の権利(所有権)を国に認めてもらうかどうか。誤解を恐れずに言えば、自分のものとして他人に売ることができるかどうか。

固定資産税をどうするかは、相続人が複数いる場合に、どの相続人が固定資産税を支払うのか(支払者の決定、自治体からの固定資産税の支払い督促先を誰にするか?)ということ。

業界では「課税と登記は別」という表現が使われることがございます。

①登記(名義変更)をした場合、課税(固定資産税)は必ず権利を取得したものにかかっていく。法務局のデータと自治体のデータは連動しているので、そこに食い違いはない。

但し、自治体のデータと法務局のデータが完全に一致するのは名義変更した翌年の1月1日である。(そのために縦覧期間という固定資産税に関する変更届出の制度がある)そこで、一般に不動産取引を行う場合、固定資産税の日割り計算を行い、買主が売主に日割りに応じたお金を清算するのが通常である。

②逆に、登記(名義変更)をせずに放置した場合はどうなるか?これは前述のとおり、不動産を管理している地方自治体から「固定資産税の支払人となる人を定めてください」という通知が来て、相続人代表という形で納税者が決まるだけである。登記(名義変更)をしなくても罰はないが、登記(名義変更)をしなくても、固定資産税からは逃れられないのである。相続人のどなたかが必ず支払わないといけないというのが国の制度である。

では②の状態を放置するとどうなるか?

これは東日本大震災の復興でもクローズアップされたが、「相続未登記問題」を発生させることとなる。

概略は自治体が道路を建設したり、または住宅地を復興に絡めて開発しようとしても、相続登記未了の間に、相続人(分割協議書に印鑑をいただく方)がどんどん増えてしまって、1筆の土地の名義を変えるのに数百万のお金がかかってしまう。名義変更の費用が高すぎて土地を開発し直すことができない

これは地方から都市部への人口移動(相続人探し)も絡んで本当に深刻な問題になりつつある。

私たち、司法書士はこういう事態にならないために、「相続登記をお早めにしてください」とお願いをしていますが、お客様のご都合もございますし、立場上、それ以上は申し上げることはできません。

また、役場の窓口の方も、固定資産税の名宛人が確保できれば、それで部署の目的は達成されるので、それ以上は深くお話しされないと推察されます。

そうしているうちに、地方を中心に法律上の権利が錯綜しすぎて実際上利用できない土地がどんどん増えていく。そういう悲しい末路が少しずつ現実になってきております。

相続登記はお早めに。