所有権放棄(1)(不要な土地を手放したい)

鹿児島県南九州市川辺町の司法書士・行政書士事務所 司法書士の峠坂洋昭です。本日は「所有権放棄」ついてお話しさていただきます。

最近、多いご相談が、東京や大阪などにお住いの遠方の相続人から、両親の住んでいた実家の家土地をどうしたらいいのか?とお話を受けるときです。この手のお話、誰かに買ってもらうだの、国に寄付するだの、本当にいろいろあるのです。今回は売却先が見つかった場合は別にして、売却先が見つからない土地についてどうしたらいいかという点にしぼってお話しさせていただきます。

(1)無主の不動産は国庫に帰属する(民法239条2項)

「所有者のない」不動産は国庫に帰属する。そう民法は定めております。「所有者のいない」とはどういう意味でしょうか。それは親名義の不動産の相続であれば、相続放棄(民法936条 家庭裁判所への申述が必要)の手続をして相続人が存在しなくなる状態をいうものと考えられます。

たいていは、預貯金は相続するけど土地はいらない、あそこの土地は売れそうだから欲しいけど、あの山はいらない などの遺産分割を行っているのが普通です。相続放棄行っておりません。ですので「所有権の放棄」をするにはまず相続人の全員が相続放棄の手続きをしなければなりません

父が死亡した相続の事例で考えますと、第一順位(子供、孫)が相続放棄したのちに、第二順位(祖父母)、第三順位(父の兄弟、おい、めい)がすべて相続放棄をしなければなりません。これは大変手間のかかる作業です。また一度遺産分割をしてしまえば相続放棄はできなくなります。相続放棄の手続きを利用すると相続したい遺産の取捨選択もできません。

結局、民法の条文で国に不動産を取得してもらうには相当手間がかかります。また、自治体としても市道や県道の拡張工事で道路の寄付を受け入れることはありますが、所有者の都合でいらなくなった土地を受け入れるとうのは相当ハードルが高そうです。

(2)地方自治体の財源~固定資産税~

地方自治体は財源の多くを固定資産税の収入に頼っています。市民のいうとおりにいらない土地を引き取っていれば固定資産税をかけられなくなります。容易に認められる話ではありません。

(3)立法解決

空き家問題、固定資産税の問題は日に日に存在感を増す問題と思われます。地方から都市部への人口移転のひずみが今になってでてきていると思われます。

「所有権の放棄」も現場の担当者レベルでなんとか対応できる性質の話ではなく、国や自治体による立法手当が望まれます。

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