鹿児島県南九州市川辺町の司法書士・行政書士事務所 司法書士の峠坂洋昭です。本日は名寄帳の問題についてお話しさていただきます。
名寄帳とは文字通り、「名前を寄せる」こと。具体的にはその市町村に存在する土地建物がすべて余すことなく把握できる証明書です。役場にあるデータについて名前で検索をかけてその人の所有するすべての不動産を名寄せして証明する。相続登記を申請するときに漏れのないように司法書士は多用しております。
共有のときどうするのか、納税義務者が他にいるときに出していただけるか、自治体によって取扱いが異なってくるのですが、なかでも一番厄介なのが、名寄せ台帳に見ず知らずの登記名義人(登記簿上の所有者)がでてくる場合です。祖父でも祖母でもない。先祖でもない。親戚でもない。そういう赤の他人が出てくるケースがよくあります。
役場では「時効取得や裁判で名義を変えることができます」と一応説明されているみたいですが、費用までは説明されないので、絶対に名義人を変えなければならない場合(区画整理や道路用地買収)は別として、ほとんどの場合は、費用多寡としてその土地は放置されることになります。
ただ、そのあとが問題になります。実際上、名義は自分に変えられない。名義が変わらないので処分(売却)できない。売れない。売れないのに固定資産税はしっかりと課税される。しかもその人は自らの先祖でもない。赤の他人である。課税上の不公平感は残りますよね。
未登記建物などの場合、家屋異動届を出すことにより納税上の名義(自治体)は変えることができます。土地の場合にも権利異動届という制度がある模様で、課税上の名義人(固定資産税の支払人)だけ変更することができます。ただ、少なくとも登記名義人の相続人を調査しなければなりません。その費用がかかります。印鑑証明書の添付も要求されることがあります。専門士業としては固定資産税の納税義務者を変更するために、職務上請求書を使って戸籍がとれないのではないかという問題も残ります。
バブルの時代には不動産は資産であり肯定的評価がなされていたと思いますが、低成長時代においてそうはいきません。不動産は負債であり消極評価される方も多くなれば、名寄せ台帳から名義が変えられない土地を放棄できる仕組みなども検討されてしかるべきと思われます。